SDGsがビジネスチャンスであるかどうかを安易に判断することはできません。
「ビジネスチャンス」といったインセンティブを感じさせる話でなければ積極的に取り組めないという心理的事情や経済的事情はあるでしょう。
しかしもはや「儲からなければ取り組まない」ということが通用する段階ではありません。もちろん改革が成功し新たな成長段階に入れたとすれば望ましいことに違いありませんが、資本主義は「格差を生みやすい」という負の側面を持っていることを忘れてはいけないと思います。社会の持続性を考えるなら「民も国も豊かにする」という原点に立ち返って「成果を独り占めしない」ことが大切です。
また人類が文明の発展途上で地球の様々な資源を大量に消費し地球とのやりとりが釣り合わなくなってしまったこと、これが経済成長の代償として人類の存続さえ脅かす状況となっていることも認識しなければなりません。この問題は温暖化・気候危機だけの話ではありません。そうした意味では今人類が立っている分岐点において存続の道を選べる「最後の(ビジネス)チャンス」と言えるかもしれません。
斎藤幸平氏の「脱成長」論は成長そのものを否定している訳ではなく、むしろ資本主義の「民も国も豊かにする」という本来の考え方に忠実に地球全体に広げていくことがこれからの経済活動に求められることで、その展開の過程で地球を食い潰してしまわない配慮が欠かせないことを論じているのではないでしょうか。競争原理を働かせて「自らの利益追求を至上」とする従来型の資本主義の思考で「SDGsの取り組み」=「得をするチャンス」という意識で取り組むことは改める必要があるのだと考えます。
イーロン・マスク氏の言動に賛否はあると思いますが、危機的な状況に直面する社会において自分に何ができるかを考え具体化できる実行力があれば、結果として巨万の富を得ることも不可能ではないことを彼は立証しているとも言えるでしょう。一見「成長を独り占め」しているように見えますが、企業の社会的責任(CSR)について彼なりの確固たる理念を持って実行に移し、実際に社会から求められているものを満たすことで利益に結びついているのだと思います。