プラスチック削減の切り札として導入された「レジ袋の有料化」、CO2削減の世界的な潮流である「再生エネルギー導入」と「EV推進」、これらの施策は一般社会への問題の提起と意識共有、具体的な対策の実施というムーブメントにつなげる一定の効果はあったと思われます。

有料化されたが・・・

 さて「レジ袋有料化」はプラスチック削減に対してどれだけのインパクトがあったのでしょうか。レジ袋自体はプラスチック全体の2%弱に過ぎません。もちろんこれをきっかけにプラスチック全体の削減に向けた大きな流れが起きていたら施策としては大成功です。
 そうした観点で実情を見てみると「レジ袋を使わないことによる安堵感」が蔓延しているように思われます。実際店頭に並ぶ商品にはプラスチックトレイやパッケージが相変わらず大量に使われ、安価なプラスチック製品も数多くあります。工業製品(大量生産、大量消費、使い捨てされる日用品や家電など)に使われているプラスチックも目立って減ったようには見えません。プラスチック製品の組成にバイオ素材を含める開発も進んでいるようですが、急がれる解決には間に合っていない印象です。

ゴミステーションに山積みされたプラスチックごみ

 EVの推進も「車自体はCO2を含む排ガスを出さない」=「ゼロエミッション(ZEV)」という安易な定義があることで「自分は環境に配慮している」という誤解が広く浸透しているように感じます。次項でも述べるように現在の電源構成の化石燃料への依存度が高い日本ではガソリン車からEVに乗り換えても環境負荷やCO2排出量において大きな改善効果を得られないのが現実です。

地球規模で
エネルギー問題を考える

 欧州全体の電源構成において約半分が再生可能エネルギーとなっていることに比べ日本では3/4が化石燃料のままで再生可能エネルギーは20%にも満たないものです(2020年度現在)。EVは再生可能エネルギーによる充電設備と車をセットにしたシステムとして販売・展開することで初めて「環境配慮」を謳えるようになると思います。民業発でムーブメントを起こせることは理想かもしれません。しかし化石燃料への依存度が高い日本で経済へのダメージを伴う劇的な変化は民間から自発的に立ち上がるのを待っていても進みません。国や自治体などの行政が本気度を示し、民間企業や市民の共通理解と協力を得て進めることがどうしても必要です。特に高齢化が進む地域社会においては自動運転機能の開発・社会実装を含めたモビリティの再構築が必要です。EV化の方向性自体は間違いないと思いますが、ピンポイントな形ではなく社会全体のエネルギー利用のシステム改革の中にモビリティの在り方についても位置付けてムーブメントに繋げていく必要があるのではないでしょうか。